アバレプト点眼液

既存のドライアイ治療で症状がなかなか改善しないとお悩みの方へ。
アバレプト点眼液は、これまでの点眼薬とは異なる仕組みでドライアイに働きかける新しい処方薬です。
この記事では、その特徴や使い方、副作用、どのような方に向いているのかをわかりやすく解説します。
小林 一博 (日本眼科学会認定 眼科専門医)
川越ルミタス眼科 白内障と近視のクリニックの執刀医。
東京大学医学部附属病院や虎の門病院等の基幹病院にて、高度な眼科手術の研鑽を積んだスペシャリスト。ICL認定医として近視矯正から多焦点レンズを用いた白内障手術まで、精密な手技を要する眼内レンズ治療を専門としています。
科学的根拠に基づく、正しい医療情報を発信しています。
アバレプト点眼液とは

アバレプト点眼液(一般名:モツギバトレプ)は、2025年12月に日本で承認されたドライアイ治療薬です。
従来の点眼薬とは異なる新しい作用機序を持つ薬として注目されています。
涙の量や質に直接作用するのではなく、症状の原因の一つである「知覚の過敏さ」にアプローチする点が特徴です。
そもそも「ドライアイ」はなぜ起こるのか?

ドライアイは、目の表面をうるおしている「涙のバランス」が崩れることで起こる状態です。
目が乾く、ゴロゴロするなどの違和感から始まり、症状が進むと読書やパソコン作業がつらくなることもあります。
最近では、スマートフォンやパソコンの長時間使用、エアコンによる乾燥、コンタクトレンズの長時間使用などが原因となり、ドライアイの方は増えています。日本では約2,200万人が該当するといわれています。
こうした状態は、涙の量が減るだけでなく、涙が目の表面にうまく広がらないことや、すぐに乾いてしまうことなどが重なって起こると考えられています。
ドライアイの治療法について
現時点では、ドライアイを完全に治す方法はまだ確立されていません。
そのため治療では、つらい症状をやわらげたり、目のうるおいを保ったりするための点眼薬が使われます。
代表的なものとして、目をうるおすヒアルロン酸の目薬や人工涙液のほか、涙の分泌を促すタイプの点眼薬、目の表面の回復を助ける点眼薬などがあります。ただし、これらの治療を続けても、症状が十分に改善しないと感じる方も少なくありません。
アバレプト点眼液は新しい作用機序のTRPV1拮抗薬

アバレプト点眼液の有効成分「モツギバトレプ」は、これまでにない新しいタイプの目薬です。
目の表面や神経には、刺激を感じ取るセンサー(TRPV1)がありますが、ドライアイではこの働きが過敏になり、不快感が強く出ることがあります。
この目薬は、その過敏な反応を抑えることで、乾いた感じやゴロゴロ感などのつらい症状をやわらげます。また、目の表面の状態を整える効果も期待されています。国内で行われた臨床試験では、偽薬(プラセボ)と比べて効果と安全性が確認されています。
TRPV1とは何か?わかりやすく解説
TRPV1は、痛みや熱、カプサイシンなどの刺激を感知するタンパク質です。
2021年には、その発見によりノーベル生理学・医学賞が授与されています。
ドライアイとの関係では、このセンサーが過敏になることで、わずかな刺激でも強い不快感として感じやすくなると考えられています。
他のドライアイ点眼薬との違い

従来の点眼薬は、「涙の量を増やす」「目の表面を保護する」「ムチン分泌を促す」といったアプローチが中心です。
一方でアバレプト点眼液は、こうした方法とは異なり、知覚の過敏さに着目して作用します。
検査上は改善しているにもかかわらず、乾燥感や痛みなどの症状が続く場合、角膜の知覚過敏が関与している可能性があります。
角膜には刺激を感じ取る神経やTRPV1が存在し、炎症などをきっかけに過敏になることがあります。
このような状態に対し、TRPV1の働きを抑えることで過剰な感覚を落ち着かせるのが本剤の特徴です。
アバレプト点眼液が向いている人

アバレプト点眼液は、以下のような方に適している可能性があります。
- 既存のドライアイ治療を続けているが、症状の改善が十分でない方
- 目の不快感・熱感・異物感など自覚症状が強く、日常生活に支障がある方
- 医師と相談のうえ、新しい選択肢を検討したいと考えている方
アバレプト点眼液は処方箋が必要な医療用医薬品

アバレプト点眼液は「懸濁性(けんだくせい)」の点眼薬で、有効成分が粒子として混ざっているのが特徴です。
【使用方法】
- 通常、1回1滴を1日4回点眼します
- 成分が底に沈んでいることがあるため、キャップを閉めたままよく振ってから使用してください
- 5分以上の間隔をあけてから他の目薬を点眼してください。
【保管方法】
- 容器は「上向き(キャップを上にして立てた状態)」で保管します。
- 室温で保存し、直射日光や高温多湿を避けてください
本剤は市販薬ではなく、医師の処方が必要です。
使用を希望する場合は眼科で相談しましょう。なお、新しく承認された薬のため、2027年3月末までは1回の処方につき14日分までという日数制限があります。
アバレプト点眼液の副作用と注意点

【主な副作用】
- 点眼後に一時的に目がかすむことがある(霧視)
- 目に冷感や熱感を感じることがある
- 低体重の患者さんや小児への使用は、特に慎重な判断が必要
点眼後、目のかすみ(霧視)が続く間は、自動車の運転や機械操作を控えてください。
【特に注意が必要な点】
- 熱や痛みを感じにくくなる作用(熱痛知覚閾値の上昇)により、熱い物体に触れても気づきにくくなる場合がある
- 低温熱傷を含むやけどに注意が必要です
- 高齢者の方も、体の機能低下により温度覚の変化が起こりやすいため、同様の注意が必要です
副作用の多くは目の局所的なものですが、TRPV1を介した温度感覚への影響は日常生活で思わぬリスクになることがあります。
また、本剤の成分に対してアレルギー(過敏症)の既往がある方は使用できません。
使用中に気になる症状が出た場合は、自己判断で中止せず、処方した眼科医に相談してください。
こんなときは眼科に相談を

次のような状況があれば、早めに眼科を受診することをおすすめします。
- 目の乾き・痛み・不快感が続いていてつらい
- 現在使っている点眼薬を続けているが、改善を感じにくい
- 強い異物感や見えにくさが突然出てきた
- 複数の目薬を使っているが、どれが自分に合っているかわからない
ドライアイは症状の原因や種類によって、適切な治療薬が異なります。
自己判断でのケアに限界を感じたときは、ぜひ専門の眼科でご相談ください。
川越ルミタス眼科では、症状に応じた適切な診断と治療をご提案しています。
まとめ

アバレプト点眼液は、知覚過敏に着目した新しい作用機序のドライアイ治療薬です。
従来の治療で十分な改善が得られなかった方にとって、新たな選択肢となる可能性があります。
使用にあたっては、医師や薬剤師の説明をよく確認し、正しく使用しましょう。
よくある質問

他の目薬と一緒に使えますか?
併用は可能ですが、同時に使用すると効果に影響する可能性があります。
5分以上の間隔をあけてください。
アバレプト点眼液の副作用はありますか?
霧視や冷感・熱感などが報告されています。
また、やけどに気づきにくくなる可能性があるため注意が必要です。
アバレプト点眼液はどんなドライアイに使われますか?
既存治療で改善しにくい場合や、知覚過敏が関与していると考えられるケースで検討されます。医師が状態を確認したうえで判断します。
妊娠中や授乳中でも使用できますか?
治療上の必要性が高いと医師が判断した場合に限り使用が検討されます。自己判断せず、必ず眼科医にご相談ください。
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東京大学医学部附属病院や虎の門病院等の基幹病院にて、高度な眼科手術の研鑽を積んだスペシャリスト。ICL認定医として近視矯正から多焦点レンズを用いた白内障手術まで、精密な手技を要する眼内レンズ治療を専門としています。
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